アリーナ規模も復活 ライブエンタメ“手探り”再開の課題
観客側のモラルも向上
また、オンラインの強みを生かしたライブを展開し話題になったのがサカナクションだ。同じく先月15、16日、日本初の3Dサウンドを採用、都内の倉庫を会場に、プロモーションビデオとライブをミックス。コロナで収入が3分の1に激減したにもかかわらず、予算3000万円の予定が制作費1億円超の大赤字ライブを決行。
結果、視聴者数は6万人超を記録し、ライブ単体では黒字化。ネットでは「採算度外視でつくったクオリティーの高さに大満足。通常視聴券4500円でも安かった」と高い満足度を示すコメントが相次いだ。
同志社女子大学教授(メディア論)の影山貴彦氏がこう言う。
「手探りながら“新しいエンタメの可能性”が生まれ始めている手ごたえを感じます。私も大阪で三谷幸喜さん作、大泉洋さん主演の舞台『大地(ソーシャルディスタンスバージョン)』を見に行きましたが、演者の力の入り具合、観客同士の一体感など“ポジティブな緊張感”が漂い、ライブの良さを改めて体感しました。また、検温はもとより、チケットの半券に氏名と連絡先の記入、COCOAのアプリ登録チェックもあり、新たな“ライブ観賞のたしなみ”も整い、“観客側のモラルの向上”も見られました。オンラインライブも精度が上がり、オンライン配信も対価を払うことが、アーティストを支える上で必要だということも認識され、演者と観客の関係性はより強固になったかもしれません。あいみょんさんは50万人以上が視聴したという日比谷野音の無観客無料ライブの最後に『やっぱり寂しい……最初で最後(の無観客ライブ)にしたい』と語っていましたが、ライブの醍醐味も含め“エンタメが酸素と同様に人間にとって必要不可欠”だということを知らしめつつあると思います」
エンタメは人間の精神にとって“不要不急”ではないのだ。