年の瀬に思う…深作欣二監督のヤクザ映画に出会ったこと
73年1月、「仁義なき戦い」は予想を超えて胸が熱くなり血肉が躍り騒ぎ、「仁義」や「渡世」という語句も初めて意味が分かった。人間、人を裏切ってはならない。人生、流れるままに。さまざまなことを教えてもらったようだった。
その年の4月の末、今度は第2弾「仁義なき戦い 広島死闘篇」が道頓堀東映オールナイト興行にお目見えした。主人公は文太さんが脇に回ってしまい、北大路欣也が扮する復員兵の身寄りのない孤独なチンピラヤクザだった。彼が殺し屋に仕立てられて殺人を続け、警官隊に追われた果てに拳銃をくわえて自殺してしまうのが哀れでならなかった。自分も周りに適当に使われてるうちにあんなになってしまうのかなと、未来の見えない自分を投影して複雑な気持ちだった。舞台挨拶で万雷の拍手に迎えられて登壇した深作欣二監督も初めて知った。正面に立つこの中年男がこの凄い映画を作った人か。映画は監督が作るものなんだと改めて思った。
十数年経った後、深作さんと飲ませてもらった時「あの日のオールナイトで映画を志したんです」と言うと、サクさんは「そうか、不幸な道に誘ってしまって悪かったな」と笑っていた。
いよいよ、あすから「無頼」が公開される。邦画じゃ久しぶりに作られたヤクザ者の映画です。どうぞ憂さ晴らし、気晴らしにご覧くだされ。