「いっちょうけんめいやります」誕生秘話…二つ目昇進時に
二つ目昇進の際、大師匠の林家正蔵(後の彦六)から、一朝という名跡を頂いた。
「一朝というのは、大師匠が稽古をつけてもらった恩人、三遊一朝師匠だと伺いました。三遊亭でなく三遊です。あたしは春風亭柳朝の弟子ですから春風亭一朝でいいと」
正蔵という名跡は、先代正蔵の息子である林家三平(先代)の海老名家から借りていたものである。
「いずれは海老名家に返上するので、その際に一朝を継ぐつもりだったらしいです。その名を頂いたので、うちの師匠が羨ましがって、帰りのタクシーの中で、『一朝は俺が欲しかったんだ』と言うから、『じゃあ、柳朝ととっかえましょうか』と言ったら怒られました(笑い)」
一朝というのは、格としては真打ちの名跡だ。それが二つ目昇進時に名乗ったので周囲が驚いたという。
「改名したばかりの頃、高座で、『名前が一朝っていうくらいですから、いっちょうけんめいやります』と言ったら受けたんで、毎回やるようになりました。今でもやってます。これを言わないと、お客さまに『どうしてやらなかったんです』と言われます。中には『芸惜しみするな!』と言う客もいて。あんなの芸じゃありませんよ(笑い)」