立川談志が「柳朝んとこに入った弟子はどいつだ?」と…
一朝が前座になりたての頃(前座名・朝太郎)、末広亭の楽屋で働いていたら、立川談志が出番もないのに入ってきた。
「いきなり、『柳朝んとこに弟子が入ったらしいが、どいつだ?』と聞くので、『あたしです』と答えたら、『てめえか。柳朝みてえな野郎のどこがいいんだ!』と言い捨てて出て行っちゃった。談志師匠は前座時代にうちの師匠にいじめられたらしいんです。それでわざわざ弟子を見に来たんですね」
談志のことだ。楽屋受けのパフォーマンスがあったろうが、本音もあったはずである。
「ところがその後、同期で仲が良かった左談次が、外遊する師匠を見送りに行くというので付いてったら、師匠の機嫌が良くなって、帰国後、お土産を頂いて。それからも、ホール落語会でお会いするたび声を掛けてくれました」
一朝は笛を習っていたので、笛がうまい前座として、ホール落語会で重宝された。
「東横落語会や国立小劇場の落語研究会などに使ってもらったおかげで、名人上手の師匠方の高座を舞台袖という特等席で見聞きすることができました。ある時、談志師匠が弟子を引き連れ、『てめえたちは揃いも揃ってバカなんだから』と小言を言いながら東横の楽屋に入って来た。それであたしを指して、『見ろ、あんなバカな柳朝んとこだって、こういういい弟子がいるんだ』と言った(笑い)。後で左談次が、『シャレんならないよ』と、ぼやくぼやく」