著者のコラム一覧
児玉愛子韓国コラムニスト

韓流エンタメ誌、ガイドブックなどの企画、取材、執筆を行う韓国ウオッチャー。新聞や雑誌、Webサイトで韓国映画を紹介するほか、日韓関係についてのコラムを寄稿。Webマガジン「オトナの毎日」でイラストエッセー【毎日がエンタメ】を連載中。

韓国映画の世界躍進を支えた金大中大統領と香港の中国返還

公開日: 更新日:

 1年前の今頃、韓国は期待と興奮に包まれていた。ポン・ジュノ監督の映画「パラサイト 半地下の家族」が米アカデミー賞で作品賞を受賞するのではないか――多くの国民がテレビ中継で授賞式を見守った。ご存じのように同作は作品賞のほか、監督賞など4冠に輝いた。アジア映画初の快挙だった。

 かつて、アジアで勢いがあったのは香港映画だ。ブルース・リーやジャッキー・チェンといった俳優も脚光を浴びた。その当時は韓国映画がこれほど注目を浴びるとは誰が想像しただろうか。実際、今から30年前の韓国映画界は不況で低迷していた。

 ところが1997年の中国返還後に香港映画が失速。中国による検閲で自由に作れなくなった上、アジア通貨危機で経済的にも苦しくなる。そんな逆境の香港映画を横目に台頭してきたのが韓国映画だった。

 韓国もアジア通貨危機で打撃を受け、国際通貨基金(IMF)の管理下に入ったが、98年に就任した金大中大統領の「文化大統領」宣言で映画界は大きく変わる。金氏は選挙で「韓国映画界に助成する」という公約を掲げ、就任後は「1台の車を売るより1本の映画を売ろう」というスローガンを打ち出した。国策として映画産業を支援し、映画振興委員会への助成金は、日本円で年間約150億円。韓国アカデミーを創設して映画監督を養成した。ポン・ジュノ監督も教育を受けたひとりである。シネマコンプレックスが登場したのもこの頃で、作品の“表現の自由”は飛躍的に拡大。99年になるとハリウッド映画にも劣らないスケールの「シュリ」が公開された。

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