著者のコラム一覧
細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

夜の銀座はクラブ「姫」の時代 作詞家・山口洋子の始まり

公開日: 更新日:

 一方「おそめ」と人気を二分した「エスポワール」のママ、川辺るみ子に対しては、なかなか辛辣である。

《新参者の私が敬意を表して先に一礼して顔をあげると、牡丹の花みたいに艶やかな嘲笑が、あなたの身分でよくこんな席へ出てこられたわねという目くばせになって、尊大に頷いていた。(中略)たかだか酒場の女主人じゃないか。そちら様は看板を売るのが生き甲斐かもしれないけれど、私にとってのマダムの地位は生活の手段というだけだ》(同)

 銀座の旧来の慣習を崩した「姫」とマダムの洋子は、同業者にとっては招かれざる客だった。しかし、20代や30代の若い客にとって、慣習もしきたりもなんの関係もなかった。古株の客もいなければママとも気安く付き合える。その上、ホステスは若くて軽くて美人。何も言うことはない。彼らは40代、50代になっても「姫」に通った。「姫」の時代が長く続いた理由はそこにあった。

 のちにパートナーとなる野口修との共通点も同じようなものだったのかもしれない。というのも、彼もほぼ同じ時期に、ボクシング界の旧態依然とした慣習を打破しようと、タイ人ボクサーの導入や、チケットのプレイガイドの有効活用、新たなイベントの実施等々、ボクシング興行に新風を吹かせていた。古い世代のプロモーターとの対立は日常茶飯事で跳ね上がりの野口修は、何くれとなく煙たがられていた。山口洋子と置かれた立場は同じだったのだ。とはいえ、この時期2人はまだ出会っていない。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    俳優・山口馬木也さん「藤田まことさんは『飲め、飲め』と息子のようにかわいがってくれた」

  2. 2

    前代未聞の壮絶不倫・当事者のひとりがまたも“謎の欠場”…関係者が語った「心配な変化」とは???

  3. 3

    テレ朝ナスD“経費横領&パワハラ処分”に「見せしめ」の声も…家族団らん投稿の美人料理家妻に同情集まる

  4. 4

    自信なくされたら困るから? 巨人・田中将大がカブス戦登板「緊急回避」の裏側

  5. 5

    東原亜希の“黒帯バスローブ密会”乗り越えた「許す力」は佐々木希以上? 経済的自立も目指す強心臓とたくましさ

  1. 6

    料理研究家の森崎友紀 “本業”専念も恋愛は「年も年なので」

  2. 7

    兵庫県パワハラ知事に残った選択肢は「議会解散」のみ…多数派工作で延命図るか?味方は“情報漏洩3人組”のみ

  3. 8

    あす旧統一教会に解散命令か? N国党に急接近の不気味、タダでは転ばない悪あがき

  4. 9

    巨人の“アキレス腱”は絶対的セットアッパーが使えないこと…新助っ人キャベッジで外国人枠「満員」

  5. 10

    佐々木希が「芸能人格付けチェック」で"地雷キャラ"といじられ…夫・渡部建を捨てないもう1つの理由