「あの頃の世界戦はだいたい『姫』で決めたようなもんだから」
野口ばかりか、その周囲の友人や関係者までが「姫」に顔を出すようになった。一方の洋子も今まで以上に目黒に現れるようになった。かくしてお互いの生活圏に入るようになったのである。
だからといって、すぐ恋愛関係に移行したわけではまったくない。洋子が多忙な合間を縫って目黒のオフィスまで雀卓を囲みに来たのも、おそらく、顧客の関心を引くためだったろう。いわば営業活動の一環でよくある話である。
しかし、客とマダムの関係が次第に、変質していく。まずは「共通の仕事」が始まりとなった。 =つづく