上野・鈴本7代目が胸に刻む先代、先々代の言葉「顔付けは別だよ」
「鈴本演芸場」7代目席亭・鈴木敦さん
「芸人さんとお客さんを大事にすることが常々行われている世界」と上野鈴本7代目席亭の鈴木敦さんが考える寄席演芸界。子どものころから、その空気感は身近にあったという。
「父にうまくやられたなと思います」と、跡取り意識を注入された過程を、次のように振り返る。
「小学生のころ、お正月に手伝いをすると、芸人さんからお年玉がもらえることを覚えたんです。黙って入り口に立っているだけで、席亭の息子だからって。(5代目柳家)小さん師匠、(古今亭)志ん朝師匠などみなさんにいただきました。ポチ袋は今も大切に持っています。楽屋に行けば、先代の(紙切りの林家)正楽師匠が何でも切ってくれました。楽しかったですね」
将来的に演芸場を継ぐという運命は中学、高校時代には自覚していたが、大学卒業後は「父に好きなことをやってほしい」と言われ、興味があった広告業界の入社試験を受け、大手広告代理店に入社した。
「人事、営業、最後はテレビ局の担当をやりました。仕事の仕方は今の役に立っていますね」という経験を積み、30歳で退社。「そろそろ戻ってきてほしい」。父にそう言われ、未練なく家業に入った。