サンドウィッチマンが示したコメディアンの矜持 NHK番組で聖火台点灯のブラックユーモア
小林氏を解任した判断にはさまざまな意見があるだろう。しかし、それは報道とは別の議論だ。結果を忖度して知り得た情報を秘匿するならば、それはジャーナリストとしては背信行為となる。ジャーナリストは立ち位置で報道しているわけではない。知り得た事実を伝えるという、それがジャーナリストの矜持だ。
■「炎上の炎が聖火台に…」
コメディアンにもその矜持を見た。開会式直前のNHKの番組でのことだ。聖火台の点灯がどうなるか予想した時、サンドウィッチマンの富澤たけし氏が、「辞任、解任した人が勢ぞろいするんですよ。で、『どうなってんだ』と。その炎上の炎がこう行くんじゃないか、聖火台に……」と語った。一瞬、他の出演者が顔をしかめるシーンが画面に出たが、私はこの発言は番組を救ったと思う。当然のように礼賛一色の番組で語られたのはバラ色の五輪で、それは言論の自由がない国の国営放送で見られる光景だった。富澤氏の発言はブラックユーモアで自由な社会の番組にしてくれた。コメディアンの真骨頂だった。
しかし開会式を見ていて、組織委員会には矜持のかけらも感じなかった。出し物の良し悪しを言っているわけではない。開始時間だ。なぜ午後8時だったのか? 聖火台の点灯式に高齢で体の不自由な長嶋茂雄さんや被災地の子供たちが現れたのは夜中だった。これは米国東部時間と重ねると推測ができる。日本の午後8時はアメリカの朝7時だ。あくまでも推測だが、独占的な放映権を持つ米NBCテレビの意向が働いたとみるのが自然だろう。7時より前では視聴者は獲得できない。