著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

テレ朝系「IP~サイバー捜査班」は佐々木蔵之介と福原遥から目が離せない

公開日: 更新日:

 佐々木蔵之介主演の木曜ミステリー「IP~サイバー捜査班」(テレビ朝日系)。舞台は京都府警が新設したサイバー総合事犯係だ。主任の安洛(佐々木)をはじめ、多和田(間宮祥太朗)や古宮山(福原遥)らのメンバーがいる。サイバー犯罪はすでに日常的なものであり、それに対応する専門部署が活躍する刑事ドラマが出てきたのも当然かもしれない。

 捜査班が扱ってきた事案もソーシャルハッキング、ネットストーカー、そしてデジタル密室での殺人など多彩だ。

 先週は、ネット上に置かれた自分の情報を消去する「デジタル終活」をしていた若い男、影森(柾木玲弥)が殺害された。パソコンやスマホを処分するだけでなく、借金をしてまでも「削除代行業者」に依頼した理由は何だったのか。安洛たちは影森のGPSデータを入手・解析し、彼の足跡を追う。やがて、たった一人の肉親である妹(松井愛莉)の存在や、影森が関係した過去の事件の真相が明らかになってくる。そこには妹を思う切ない心情があった。

 そう、サイバー捜査だけでなく、事件の背後にある「人情」をじんわりと描くところが、このドラマの持ち味だ。一見クールだが、人の悲しみや苦しみを見捨てておけない安洛。そんな上司が、もしかしたら自分の父親かもしれない古宮山。佐々木と福原の掛け合いと表情から目が離せない。

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