<50>愛犬イブの葬儀のため東京駅で待ち合わせ…ドン・ファンは「ミス・ワールド」と現れた
この日の昼すぎに、アプリコの番頭格・マコやんから事情を聴くことができた。
翌8日の午前7時前、ゴールデンウイーク明けの東京駅に通勤客や旅行者の姿は少なかった。ドン・ファンとの待ち合わせは八重洲中央口の改札前だったが、彼の姿はない。10分ほどすると携帯にかかってきた。
「ホテルに忘れ物をしてしまって一度、戻っていましたから、あと10分ほどかかります。よろしくお願いいたします」
■改札口に現れた「ミス・ワールド」
電話の向こうから社長の落ち着いた声が聞こえた。10分では定宿の六本木のホテルから来ることはできない。彼がこのようなウソをつくのは珍しいことではないので、気にも留めなかった。
もっともこの時は他に皇居前のホテルも利用していたことを知らなかった。そこからだと東京駅までタクシーで5分もかからない。築地の聖路加国際病院に通うには、確かにこちらの方が便利だ。
社長がやっと姿を現したと思ったら、後ろから長身でスレンダーな女性が現れた。社長のバッグを手にして、私にペコリと頭を下げた。
「ミス・ワールドやで」
社長が誇らしげに紹介した。=つづく