<10>立川談志没後10年「うちの師匠は希代の落語家だったと思います」
最後に、没後10年になる談志について再び語ってもらおう。
「うちの師匠は、共に四天王といわれた先代柳朝師匠の『江戸前の歯切れの良さと豪放さ』と、先代円楽師匠の『知識と寄席への強い恋慕』と、志ん朝師匠の『こまやかな優しさとオーラ』、それらの要素をすべて兼ね備えた希代の落語家だったと思います」
それは弟子から見た贔屓目でなく、事実だと私も思う。
「師匠は目下の者にでも、親切にされると必ず、『ありがとう』と礼を言いました。それがごく自然で、東京人らしいスマートさがあった。言われたほうは、たまらなくうれしいもんです。私もそれを真似たいと思ってます」
談志の「ありがとう」は私の記憶にも強く残っている。最後に見舞った時の筆談でも、「ありがとう」と書いたものだ。
談幸は噺だけでなく、談志イズムも継承しているのだと感じた次第である。
(聞き手・吉川潮)
■出演情報
浅草演芸ホール 十月上席後半(10月6~10日)