著者のコラム一覧
北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

【寄稿】「イカゲーム」はなぜ世界中でヒットしているのか?(北島純)

公開日: 更新日:

 Netflixで配信中のドラマ「イカゲーム」が世界中で大ヒットしている。83カ国のNetflixランキングで1位を獲得、空前の記録を打ち立てた。

 勝てば賞金456億ウオン(約42億6000万円)、負ければ即死というデスゲームを描いた「イカゲーム」(Squid Game)は、Netflixオリジナルの全9話からなる韓国ドラマだ(ファン・ドンヒョク監督)。

 イ・ジョンジェ演じる主人公は妻子と別れ、多額の借金を抱える失業者。首が回らない主人公は地下鉄構内で声をかけられ、正体不明のゲームに参加する。そこにはソウル大学経済学部を卒業し証券会社でエリート街道を驀進中のはずだった幼馴染みも参加していた。会社の金を横領、警察に追われていたのだ。脱北者の女性やパキスタン人労働者をはじめとする456人のゲーム参加者は全員「韓国社会で辛酸をなめている」人々ばかり。ゲーム参加への強制的要素はなく、過半数が同意すればゲーム離脱が認められるという「民主的な自己責任」の世界が用意されている。

 ゲームの内容は昔懐かしい「だるまさんが転んだ」や「綱引き」など。負ければ命はなく、日本の「カイジ」を想起させる。一見すると荒唐無稽だが、現在の韓国社会はレームダック化する文在寅政権の下で大統領選候補のスキャンダルが相次ぎ、土地住宅公社の不正取引問題などの腐敗も深刻な一方で、絶望的な経済格差に対する不満が蓄積している。このドラマには「イカゲーム」の韓国社会の今を底辺から照射するリアルさがある。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    演技とイケオジぶりで再ブレーク草彅剛と「10億円マンション売却説」中居正広氏との“絆”

  2. 2

    元ソフトバンク「伊奈ゴジラ」の転落人生…淡路島で盗み84件総額472万円、通算5度目の逮捕

  3. 3

    大関・大の里すでに「師匠超え」の鋼メンタル!スキャンダル報道もどこ吹く風で3度目賜杯

  4. 4

    米田哲也が万引きで逮捕!殿堂入りレジェンド350勝投手の悲しい近況…《苦しい生活を送っていたのは確か》

  5. 5

    テレ朝に“ナスD”超え「1億円横領」続々の過去…やりたい放題で解雇された社員のヤバい所業

  1. 6

    東洋大姫路・岡田監督が吐露「本当は履正社に再任用で残る予定で、母校に戻るつもりは…」

  2. 7

    かんぽ生命×第一生命HD 人生設計に大切な保険を扱う大手2社を比較

  3. 8

    山下智久「正直不動産」映画化でひと儲け狙うNHKに「甘い」の声も…山P人気は下降気味

  4. 9

    レイズ看板選手「未成年への性的虐待容疑」で逮捕も…ドミニカは殺人も銃撃も「無罪放免」の実態

  5. 10

    キムタク一家の妹Kōki,は映画主演の裏で…フルート奏者の姉Cocomiの話題作りと現在