<82>早貴被告は家政婦への3000万円の支払いを拒否した
2018年の10月になって、私は大下さんと早貴被告と都内で会い、3人で食事をする機会があった。私の隣に大下さん、向かい側には早貴被告が腰掛けている。
「ここに一筆書いてくれるかな」
食事が終わる頃になって私はカバンからA4の白紙を取り出して早貴被告に手渡した。
「何をですか?」
「大下さんに3000万円を贈ります。と書いてくれればいいよ」
早貴被告の顔が曇った。
「それは弁護士さんに相談しないと……」
つぶやいた。
「いや、そうではないだろ。野崎幸助さんが生前、大下さんに1000万円をあげると言っていたことは誰もが聞いている。でもキミは、ドン・ファンの遺体が自宅に帰ってくる前日に、彼が大下さんに3000万円をあげると言ってたと証言したよね? だから、それをその紙に書いてくれれば、いいんだよ」
これは私が独断でやったことで、大下さんとは一切相談をしていなかった。早貴被告は私と目を合わせることはなく、下を向いたままで動かない。