ドキュメンタリー映画「ボストン市庁舎」が活写する公職者のあるべき姿
Elected Officialsという言葉がある。選挙で選ばれた公職者のことだ。民主主義社会では、難関試験に通った秀才よりも選挙で選ばれた人間に大きな権限と重い責任が与えられる。それは、市民に政策を説明し理解を得られる人間が社会をリードすることが民主的な社会だと考えられるからだ。それが徹底されているのがアメリカだろう。今、映画「ボストン市庁舎」(写真)が各地で上映されている。フレデリック・ワイズマン監督がボストン市役所の業務に密着したドキュメンタリーだ。
そこでは、市民との対話を重ねる市役所の職員の姿がナレーションなしで描かれている。財政担当の職員が市の財政状況を市民に説明する場や、施設の改築をどう進めるかを担当者と市民の代表とが語り合う場をカメラが追う。職員だけではない。当時の市長のマーティン・ウォルシュ氏が会議の席で職員に話す場や高齢者、帰還兵との対話の場にもカメラが入る。
そのウォルシュ氏はカメラに向かって話さない。話す先は市民であり、市の職員だ。メディア向けの言葉もない。自身の子供時代に入院した経験や成人してのアルコール依存症の体験などを赤裸々に語り、市民と対話する。その徹底した双方向の姿勢が印象的だ。人種差別的な犯罪が懸念された際には、マイノリティー出身の職員を集めて、「あなたたちを守る」と話し人種差別を認めない覚悟を語る。
これこそが選挙で選ばれた公職者だ。自治体の長のあるべき姿をそこに見る。
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