<141>田辺市はアプリコ破産申し立ての説明を「何も言えない」と拒む
田辺市は野崎幸助さんがアプリコに約8億円を貸し付けていたとしてアプリコの破産を申し立てた。だが、その契約書は残っておらず、会社の帳簿上に記されているだけだった。
「アプリコにお金を融資しているんですよ」
生前、彼は私にそう言ったことがある。
「それは節税のためでしょ。帳簿上で数字だけが動いているだけじゃないですか」
私が笑いながら取り合わないでいると、彼は返答せずに苦笑しているだけだった。このような経緯があるから、私は帳簿を精査したり会計士から事情を聴取したりする必要があると思っていた。
破産申し立てをしたのが田辺市であることを知るマスコミはなかった。きっと幅広く商売をしていたのだから負債もかなりあって、そこから申し立てられたと勝手に思っていたのだろうが、それは全く違っている。実際は田辺市が独断でやったという事実を後に知ることになったマスコミ各社は、市へ取材を申し込んだ。ところが、である。市側は「(田辺市が破産申し立てをしたかどうかについては)何も言えません」と答えるだけだった。行政ともあろう機関が財政に関わる案件について情報を隠すこと自体が異常であり、正当な理由があるなら堂々と説明すればいいだけのことだ、というか世論から反発を受けることを怖がっているように私には思えた。遺言無効の係争中にそんなことをするのか! というのが私の怒りでもあった。