<150>ドン・ファンの流儀 初対面の県議にデートの仲介を要請
「ホテル川久」で初めて顔を合わせた朝食の席で、野崎幸助さんは尾崎太郎和歌山県議に「日産自動車」株についての意見を求めていた。
「まあ、大手ですから株価の変動はそれほどないでしょうから、よろしいんじゃないですか」
尾崎さんは当たり障りのない返事をしていた。そのほかの推薦銘柄についてもドン・ファンは聞いたが、私と同じようにうまくはぐらかしていた。
「ところで和歌山市のX証券にお知り合いはおられますか?」
アドバイスが一段落した後でドン・ファンが聞いた。それは尾崎さんが以前働いていた証券会社だった。
「ええ、おりますが、どうなされましたか」
「あのね~、あそこのねえ~、窓口のAさんとなんとかデートができませんかねえ~。お礼はしますから」
両手を合わせて頭を下げた。
「はあ?」
ハトが豆鉄砲を食らったように尾崎さんが苦笑したのを今でも覚えている。