<150>ドン・ファンの流儀 初対面の県議にデートの仲介を要請
尾崎さんは当時県議会議長だったので、26日の夜に運転手付きの公用車でドン・ファン宅にやってきた。ドン・ファンの亡きがらは病院から戻ってきておらず、家には早貴被告と木下さん、そして私しかいなかった。尾崎さんには26日の昼に死因が覚醒剤の大量摂取であることを伝えていた。
「お悔やみ申し上げます」
尾崎さんは早貴被告に挨拶をした後で、リビングのソファに腰をかけた。
「お茶をどうぞ」
腰かけている我々に木下さんがお茶を用意してくれた。
「大変でしたね。でも一体どうしたんでしょう。自殺ということは考えられませんよね」
尾崎さんがねぎらいの言葉をかけて死因についてクビをかしげた。
「なんでも覚醒剤が体内から検出されたらしいんです」
私が言うと、尾崎さんの体がのけ反った。
「ヘッ? 覚醒剤ですか」
尾崎さんには覚醒剤のことは昼に伝えていたが、それを初めて聞いたように阿吽の呼吸で返事をした。そうしたほうが目の前の早貴被告や木下さんの反応を確かめることができるととっさに判断したのだ。この辺りの勘の良さは、さすがである。=つづく