NHK時代劇は健闘も…“7万人を斬った”大御所・高橋英樹が憂う若手俳優のヒーロー志向
悪役という闇があってこそ正義が輝いて見える
ここ何年かは、「雲霧仁左衛門」「大岡越前」といった本格から、「小吉の女房」「大富豪同心」など市井の騒動、「鞍馬天狗」「鳴門秘帖」などおなじみのチャンバラまで、多彩な時代劇を放送してきた。この秋からは「赤ひげ4」が予定されている。赤ひげもそうだが、人気作はシリーズ化していて、「雲霧仁左衛門」「大岡越前」はパート5、6と続いている。近頃は若い層にも増えているという時代劇好きに支えられているのだ。
とはいえ、CS専門チャンネルをのぞけば、いまやテレビ時代劇の新作は大河ドラマとこれだけになってしまった。これまで7万人を斬った時代劇の大御所、高橋英樹は、このままでは「良い悪役の役者さん」がいなくなると心配している。
「最近の若い役者さんは、どうも二枚目志向、ヒーロー志向が強いようで、悪役なんて見向きもされません」「でも考えてみて下さい。許しがたい理不尽そのものの悪役という闇があってこそ、ヒーロー、正義が輝いて見えるんです」「今こそ私は悪をやりたい」(2022年1月28日付朝日新聞デジタル)
悪役に主演級の俳優を配すると、物語がグッと締まって、時代劇は俄然おもしろくなる。高橋は「慶次郎縁側日記」シリーズで、娘を失って隠居した温厚な元同心を演じていて、NHK総合で再放送中だ。次は、その高橋に、宣言通り、一世一代の巨悪を演じさせたらどうだろう。見応えあると思うよ。
(コラムニスト・海原かみな)