人生でただひとり夢中になった「アイドル・早見優」には何があった?
だが、夏の大会が終わって野球部を引退した息子は受験勉強に専念中と信じていた母親は、東京からの電話に仰天する。ファンクラブのスタッフを名乗る大人の男性から14歳の息子への伝言は「うちの早見を九州地区でも盛り上げていきたいので、潔さんがエリアリーダーになってくれませんか」。塾から帰宅した受験生はたっぷり絞られて、脱会させられた。
早見優は「花の82年組」。歌唱力なら明菜で異論はない。エッジの利いた現代性はキョンキョンにまかせよう。伊代ちゃんのおとぼけな物言いにプチブル的余裕を見いだすのも一興。そして──早見優には何があった? きれいに歳月を重ねていく姿を目にするたび、ぼくは甘酸っぱい記憶をたどりながら自問をくり返してきた。
正解は大人になって手に取った雑誌の記事にあった。オーディション番組全盛期のアイドルとしては珍しく、ハワイでスカウトされてデビューした彼女。スカウトしたサンミュージックの相澤正久氏(現社長)は自社に松田聖子がいることをまずアピールしたが、日本の最新芸能事情に疎い早見優は「ごめんなさい、わかりません」と反応が薄い。