NHK「神田伯山のこれがわが社の黒歴史」手間のかかる仕掛けにも作り手の遊び心が生きている
黒歴史とは「なかったことにしたい過去」のことだ。「神田伯山のこれがわが社の黒歴史」(NHK)は、それを“苦労の歴史”と捉え、企業の失敗経験をエンタメ化した番組だ。これまでにブラザー工業の「早すぎた配信ビジネス」やコクヨの「デジタル時代対応の新商品開発」といった、イタい歴史が登場した。
そして先週俎上に載ったのが、「第三のビール」で12連敗という過去を持つキリンだ。かつて「のどごし生」というヒット商品を生んだ後、「コクの時間」や「麦のごちそう」などを送り出すが、いずれも厳しい競争には勝てなかった。
そんな負の連鎖を止めるべく抜擢されたのが、マーケティング担当の女性社員と製造技術の男性社員だ。彼らが明かす、失敗の真相が興味深い。
たとえば自信があった商品が、インパクトを欠くネーミングとおしゃれ過ぎるパッケージが原因で、大量の競争商品の中に埋もれてしまう。その悔しさをバネに、次の新作では「原点回帰」を示すネーミングと強烈な赤のパッケージで注目を集める。それが2年で10億本を売った「本麒麟」だ。
番組では黒歴史の流れを伯山が講談風に語り、2人の試行錯誤の過程がキャラクターを使ったコマ撮りアニメで再現される。今回は「マジンガーZ」の人形たちが演じていたが、そんな手間のかかる仕掛けにも作り手の遊び心が生きている。