寺島しのぶさん なぜ唐十郎作アングラ・テント芝居に出演することに? 本人に独占直撃!
新宿梁山泊の「下谷万年町物語」に感動し…
──それが実現したのは?
「2022年に、瀬戸内寂聴と井上光晴をモデルにした『あちらにいる鬼』という映画を撮影しているとき、共演していた豊川さんが珍しく、『今、花園神社でやってる新宿梁山泊のテント芝居に六平(直政)さんが出ているから見に行こうよ』と誘って下さったのでご一緒したんです。それが『下谷万年町物語』という唐十郎さんの作品で、ずいぶん前に蜷川さんに一緒にやるなら『唐版 滝の白糸』か『下谷万年町物語』がいいよねという話をしたこともあって、それを思い出して大興奮。久しぶりにテント公演に出演されたという六平さんとヒロインの蜂谷眞未さんがとってもすてきで、終わった後に『こんな役をやりたいな』と思っていました。
豊川さんとは共演も多く、いろいろやり尽くした感じがあって、今度は演劇でご一緒したら面白いんじゃないかと思って。そして、何日か前に中村勘九郎さんもテントを見にいらしたと聞いて、これはもう何かのおぼしめしかなと思いまして、それからテント芝居プロジェクトがスタートです」
──プロジェクトというのは?
「毎月1回、みんなで集まって作戦会議という名の飲み会です。豊川さん、勘九郎さん、六平さん、金さん。まず何をやろうかということで『蛇姫様』の案も出ましたが、豊川さんが『蛇姫様より“おちょこ”のほうがいい』と言うので演目は決定です。豊川さんは、1989年に劇団3〇〇を退団した後は映像に専念していて、『僕は演劇に忘れ物をしている』と言う言葉が私の耳に残り、私は去年、50歳の節目で歌舞伎座初出演を果たし、次なる場所を探していましたし。
それに、伝え聞いた話では、新宿梁山泊が1996年に上演したテント芝居『四谷怪談~十六夜の月』を見た18代目勘三郎さん(当時・5代目勘九郎)と8代目・中村芝翫さん(当時・3代目橋之助)が打ち上げの席で舞台の水槽に裸足になって入り、『これが歌舞伎の原点だよ。こういうのに出たいな』と大はしゃぎされたそうです。勘九郎さんがお父さまの夢を実現するなんてしびれるじゃないですか。それぞれのモチベーションを高めていき、絶対実現させようと、六平さんが毎回スケジュール調整してくださり、この顔ぶれが揃うなら俺も! ということで、風間さんも参入。
後は少しずつ少しずつ進んでいきました。豊川さんは、稽古に入る前から膨大なセリフを覚え始めているようで、『セリフは一切カットなしね』と張り切ってますが、『後でカットすることになるとせっかく覚えたセリフがムダになるから待って』と言う私と攻防が始まってます(笑)」