伊東蒼はドラマや映画のワンシーンに立っているだけで、物語が生まれる
この秋は、10月8日スタートの「宙わたる教室」(NHK総合ほか/毎週火曜夜10時~)で、起立性調節障害を抱え保健室登校を続ける定時制高校の生徒・名取佳純役を演じる。
「おかえりモネ」や「新宿野戦病院」もそうだったように、伊東蒼はストーリーに一石を投じて波紋を広げる役柄が得意な女優だ。
しかも、心を閉ざしたクールな役がうまいだけでなく、登場人物が心を開いた後のやわらかい表情の表現も魅力的だ。「新宿野戦病院」でも小池栄子が演じた主人公に影響されて病院を手伝いながら目標をみつけるようになってからの、はにかんだ笑顔が抜群にチャーミングだった。
ドラマや映画のワンシーンに立っているだけで、そこに物語が生まれる女優。そう言ってもいい。
さまざまなタイプの若手女優がいる中で、印象派の絵画から抜け出たかのような淡い色彩と、内に秘める意志の強さと演技の深みとコク、わびさびと繊細さが魅力的で、存在感や演技に麻の素材の「生成り」の雰囲気を感じる……そういうタイプの女優がいる。