芸能人も集結した筒井康隆「断筆宣言」
麿赤児は熟達の暗黒舞踏で観客を魅了。アメリカで活躍するスタンダップコメディーのTAMAYOも英語と関西弁で過激なしゃべりを披露した。ブルースシンガーとしても知られた故・原田芳雄も風邪を押して参加し、ハスキーボイスで「横浜ホンキー・トンク・ブルース」を。
会場が盛り上がりを見せる中、主催者代表がエンディングを告げ、皆で再び「ジャズ大名」の演奏が始まる。するとステージの真ん中の天の岩戸に見立てた岩の扉のセットが開き、クラリネットを吹きながら筒井康隆が登場。開演2時間半にしてファン待望の筒井康隆登場であった。そしてアンコール……。
筒井康隆は出版社などの「差別的表現」の規制や、教科書に掲載されることが決まった筒井の小説が無断で削除されたことへの抗議のため、93年9月に月刊誌で「断筆宣言」を表明した。
イベントは筒井の友人の山下洋輔、評論家の平岡正明らが「『天才』筒井をこのままにしてはいけない。どんちゃん騒ぎで『天の岩戸』から引き出そう」という趣旨で始まったものだった。
もっとも、筒井康隆は断筆宣言後も引きこもっていたわけではない。若いころ、関西で新劇系の劇団で活躍していたこともあって、俳優やCMタレントとして活動して話題となった。