医学的な根拠がある「地獄耳」
「義母は耳が遠いのに、自分の噂話にはすぐ反応する。なぜ?」
50歳女性の疑問に答えるのは、JCHO(ジェイコー)東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科の石井正則先生。
「高齢者によく見られる『地獄耳』ですね。実際、加齢性難聴では普通の会話より『ひそひそ話』のほうが聞こえやすい傾向があるのです」
加齢性難聴は、老化により耳の中の蝸牛から有毛細胞が抜け落ち、「聞こえ」が悪くなるもの。有毛細胞は蝸牛の入り口付近から抜け落ちていきますが、この部分の役割は高い音をキャッチすること。そのため、高齢になると高い音から聞こえづらくなっていくのです。
「噂話や悪口は、低い声でひそひそ話しますよね。低音だから、高音域の聴力が衰えた高齢者でも聞こえやすいのです」
お嫁さんが声高に呼びかけても聞こえないのに、自分の悪口は隣の部屋からでも聞きつける……。そんなおばあちゃんの「地獄耳」には、医学的根拠があったのです。同じ理由で、女性アナウンサーより男性アナウンサーのほうが聞きやすいという高齢者も多いのだとか。
「加齢性難聴の家族に話を聞いてほしいなら、大きな声は逆効果。安いスピーカーのように音が割れて不快に聞こえてしまいます。低い声でゆっくりと、さらに唇が見えるように目の前で話せば伝わりやすくなります」
内緒の話は、高い声で話すべきかも?