著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

仁科亜季子さんは38歳で子宮頸がん発覚 HPVワクチンの現状は?

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 ワクチン導入前の1993年度生まれが20歳時に子宮頚がん発症リスクを1とすると、公的負担でワクチン接種ができた99年度生まれまでの学年は、相対リスクがほぼ0・3に落ち着いています。当時のワクチンは、7割の子宮頚がんを抑えるといわれていましたから、ほぼその通りの結果です。

 一方、定期接種ができていたころの接種率は7割ですから、0・7×0・7=0・49。対象学年は、ほぼ半数の女子学生が子宮頚がんにならずに済むことになりましたが、接種率がゼロ近くになったことで、リスクはワクチン導入前の状態に戻っています。ワクチンを接種しないリスクが、明らかです。

 そんな状況を受け、実質中止状態を見直す動きが相次いでいます。接種を見送っているうちに、公費負担対象年齢を上回った人などから「われわれにも公費負担を」という声が上がっていますが、HPVはセックスで感染するため、成人女性でセックス体験があると、すでに感染している可能性があり、接種の意味はありません。もし成人女性が接種するなら、HPV感染の有無を調べてからがよいでしょう。

 HPVはセックスが媒介するため、子宮以外の部位にも、男性にも感染します。オーラルセックスの広がりで、男女ともに中咽頭がんが急増。ペニスや肛門、膣、外陰部などもがんになることがあります。ちなみに性器が外部に露出しているペニスは、皮をむいてしっかり洗うことで、感染リスクを抑えることができる可能性があります。

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