著者のコラム一覧
小川誠司仙台ARTクリニック副院長

1978年、兵庫県生まれ。2006年名古屋市立大学医学部を卒業。卒後研修終了後に慶應義塾大学産科婦人科学教室へ入局。2010年慶應義塾大学大学院へ進学。2014年慶應義塾大学産婦人科助教。2019年那須赤十字病院副部長。2020年仙台ARTクリニックに入職。2021年より現職。医学博士。日本産科婦人科学会専門医。

不妊治療を保険適用にすることは本当に患者のためになるのか

公開日: 更新日:

 菅首相が不妊治療への保険適用を掲げ、来年4月からの適用開始を目指して現在検討が進められています。高額な治療費がかかる体外受精が保険適用となることは、金銭的な理由で治療を断念している多くの患者さんにとって朗報であることは間違いありません。

 しかし、実はそこにはさまざまな課題があるのです。一番大きな問題点はすべての不妊治療、特に体外受精を行う際に実施されている医療行為が、すべての医師が正しいと認める確立された治療ばかりではないという点です。たとえば卵巣がんになった場合、その病期(ステージ)にもよりますが、医師からは「まず手術をして、その後は特定の薬剤を使って抗がん剤治療を行いましょう」と言われます。卵巣がんに対するスタンダードな治療はすでに確立されているため、日本全国どこの医療機関でも同じように治療を受けることが可能です。しかし、不妊治療はそういったスタンダードな治療だけでは必ずしもうまくいきません。

 比較的年齢が若い患者さんで、卵管が閉塞している、あるいは精子が少ないなど原因がはっきりしていて体外受精に進まれる方であれば、スタンダードとされている体外受精治療を行えば妊娠できる可能性は非常に高いと思います。そういった方々は保険適用により大きな恩恵が得ることができます。

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