失敗しないセカンドオピニオンの受け方 医療未来学者が伝授
そうした誤解を払拭したうえで、正しいセカンドオピニオンを受けるにはどうしたらよいか。私なりに7つのポイントを考えてみました。
■迷ったら「がん相談支援センター」に相談
どこでセカンドオピニオンを受けたらいいかわからない場合には、がん診療連携拠点病院の「がん相談支援センター」に聞くと、その地域のセカンドオピニオン外来を行っている病院や、専門領域などの情報を教えてくれます。「手術よりも放射線治療が希望」といった、具体的な治療方法の希望があれば、がんの放射線治療を専門とする医師にセカンドオピニオンを受けるという方法もあります。
■セカンドオピニオンに必要な手続きの確認
セカンドオピニオンを受ける医療機関が決まったら、そこの窓口に連絡して、必要な手続き(受診方法、予約、費用、診察時間、必要な書類など)を確認します。セカンドオピニオン外来は、基本的に自費診療です。病院ごとに費用が異なります。
■手術数や治療実績の多い病院で聞く
ガイドライン治療が普及している日本では、全国どの病院であっても検査や診断、治療のプロセスは基本的に同じです。異なるのは経験です。ですから、病院のホームページなどで公表されている手術件数や患者数を見て担当医の病院よりも経験豊富な病院でセカンドオピニオンを受けましょう。スタッフも多く、日々さまざまな症例をチームで検討しているので、より多くの視点で病状を見ることができています。
■専門医資格を持つ若い医師に聞く
経験が豊富な病院で聞くことをすすめたので、医師もベテランの方がいいと思われるかもしれません。しかし、そうとも限りません。私はその領域でよく勉強していて新しい情報にも敏感で、臨床の経験も多い40代の専門医資格を持つ医師に聞くのがよいと考えます。よく、准教授より教授の方がよいのではないか、と思う人がいます。しかし、知識や情報があってもそれは研究レベルのもので実際の治療には使えないケースも少なくありません。大学での肩書に惑わされないようにしましょう。
■聞きたいことを3つ程度に絞り、頼りになる人を連れていく
セカンドオピニオンは有料とはいえ、患者が納得するまで何時間でも話を聞けるわけではありません。聞きたいことを3つ程度に絞って先生の話を聞く姿勢を保ちましょう。自分の病気の感想を語っているうちに時間切れとなり、医師の話が聞けなかった患者さんは少なくありません。
また、元の担当医の話をよく聞いてなくてセカンドオピニオンに臨み、担当医と同じ話を聞かされる場合もあります。セカンドオピニオンの目的やこれまでの担当医の説明内容について、事前に必ず自分で確認しておきましょう。できたら当日は頼りになる家族や、ある程度医療知識のある知人に同席してもらうのもよいでしょう。
■セカンドオピニオンを繰り返さない
患者さんやその家族の方の中には、自分が望む回答をしてくれる医師を求めて、セカンドオピニオンを繰り返すケースがあります。これはあまりすすめられません。がんは増殖が速く、治療の開始が遅れれば状態はどんどん悪化していきます。先述したようにまともながん治療を行う医療機関であればよいのです。
■セカンドオピニオンを受けた後
セカンドオピニオン後は担当医に会い、あなたの病気や治療方針についての考えが変化したかどうか報告したうえで、今後の治療法について相談しましょう。間違っても「これまでの担当医はもう関係ないや」と無視してはいけません。これまでの治療内容や経過などを紹介状などで引き継ぐことになるからです。
治療はセカンドオピニオン先の病院で行い、紹介元医療機関では治療後の経過観察を行う場合もあります。つまり元担当医は無関係ではなく、治療を支援してくれる医療者であることに変わりありません。関係をきちんと保っておくことが大切です。
▽奥真也(おく・しんや) 1962年生まれ。医療未来学者、医師。大阪府立北野高校を経て、東大医学部卒。仏国立医学研究所へ留学後、会津大学教授などを務め、製薬会社、医療機器メーカーなどに勤務。著書に「医療貧国ニッポン」(PHP新書)、「人は死ねない 超長寿時代に向けた20の視点」(晶文社)などがある。