猛暑で増える支出をエコノミストが分析 エアコン、冷蔵庫…家計を救う「夏の節約術」

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 6月の半ばだというのに、まるで真夏の暑さだ。テレビは連日のように「ためらわずにエアコンをつけて」と伝える。熱中症にならないために涼しさはもちろん大事だ。でも、電気代は高くなるばかり。猛暑を乗り切る賢い知恵はないものか……。

  ◇  ◇  ◇

 暑くなると、どんなものが売れて、何が売れなくなるか。毎年繰り返されるテーマだが、経済の専門家がしっかり調査したとなると関心度は違ってくる。

 何しろ電気代は6月利用分から値上がり。標準的な家庭で月に400円程度といわれるが、ガス代も上がった。こちらは月120円ほどだから合計は500円を超す。

「熱中症になったら困るので寝るときはエアコンをつけています。電気代がどれぐらいになるか。今から怯えています」(50代後半の主婦)

 食品の値上げも続いている。6月は海苔製品やチョコレート、ココアなど帝国データバンクによると614品目の価格がアップした。7月は円安の影響で約1年ぶりに一部のパンが値上がりする予定だ。

「定額減税で家計はちょっと楽になるかと思っていましたが、電気代や食品の値上がりで残念ながらそうもいきません。対策を考えないと……」(前出の主婦)

 第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏が「猛暑で増減する消費品目」を徹底調査した。

「2001年から23年までの東京の最高気温を基準にして、7月、8月の消費品目増減率の相関関係を調べました。相関関係がもっとも強かったのは電気代です。高温になるほど使用量は多くなります」(熊野氏)

2500円を浮かすエアコン対策

 暑ければ暑いほど電気代はかさむ――予想通りとはいえ、電気補助金がなくなるタイミングでの猛暑到来だけに家計はつらい。

 経済産業省資源エネルギー庁の省エネポータルサイトでは「家庭における家電製品別の電力消費割合」を算出している。

 夏季に一番使うのはやはりエアコン(34.2%)。冷蔵庫(17.8%)、照明(9.6%)、炊事(6.5%)、給湯(6.1%)と続く。

 同サイトに「無理のない省エネ節約」がある。エアコンは「レースのカーテンやすだれで日差しをカット」「外出時は昼間でもカーテンを閉める」「扇風機を併用」とある。ここ1、2年の物価高でどれも身についた節約術とはいえ、あらためて頭に叩き込んでおいたほうがよさそうだ。

 エアコンの設定温度を27度から28度(1日9時間使用)に1度上げるだけで約940円の節約になる。1日の稼働時間を1時間短縮すると約580円の節約。それにフィルターを月に1~2回掃除すれば約990円の節約だ。この3つを実践すると、年間に2510円が浮く計算になる。

■冷蔵庫「強」→「中」で1910円の得

 冷蔵庫の節約術で最初にやるべきは設定温度の確認。「強」になっていたら、「中」「弱」に変更したい。「強」↓「中」で約1910円の節約になる。ただし、省エネポータルは「食品の傷みには注意」と促している。ドアを開けている時間を短く(20秒↓10秒)すると約190円得する。

 電力消費が多い3番目は照明。電球や蛍光灯をLEDに替えるのが最も効果的だが「すでに全部替えた!」という家庭も多いはず。こうなると小まめにスイッチをオフにするしかない。LED1灯(34ワット)の点灯時間を1時間減らすと約385円の節約。7.5ワットでも約85円の節約になる。

 電力消費量の多いトップ3家電を意識するだけで節約効果はかなり違ってきそうだ。

暑いとシャツが売れる?

 電気代に次ぎ猛暑で消費が増えるのは「男子用シャツ・セーター類」。ちょっと意外な気がするけど……。

「エアコン代が野放図に増えるのを防ぐために、堅実なやり方でお金のかかりにくい猛暑対策に注意を払ってきている」と熊野英生氏は指摘している。

 要するに暑さ対策の衣類だ。「冷感アンダーウエアや接触冷感、ひんやり冷感などと銘打った衣類」を買って、少しでも暑さから逃れようというわけ。

「他の被服」も売れるらしい。ここには帽子やソックスが含まれる。最近は冷感ソックスといった暑さ対策品も登場しているので、売り上げが伸びるようだ。

 熊野氏は「節電型の猛暑対策」が増えたと分析している。

食料品は3年間で20%上昇

 食べ物はどうだろうか。暑さと相関関係が強い品目の3位は「他の飲料」だ。これは「果物・野菜ジュース、炭酸飲料、ミネラルウオーター、スポーツドリンクなど」。このあたりの商品が売れるのは当然だろうが、外食が上位(6位)に食い込んだのはちょっと驚きか。

 暑いから外出を控えるという流れにはなっていない。

「家にいるとどうしても電気代を使うので、暑い日中は飲食店内で過ごす人が増えているのかもしれません。冷房の効いたカフェや飲食店で長く過ごすので外食の支出が増加するとも考えられます」(熊野氏)

 一方、支出が減る品目もある(猛暑と逆相関関係)。トップは塩干し魚介だった。「塩サケ、たらこ、しらす、干しアジ、煮干し」あたりだ。暑いと塩分が欲しくなるから売れ行きは伸びそうだが……。

「魚の値段は上がっています。おそらく節約志向の高まりで魚類は買いにくくなっているのでしょう。また外食が増えると家で食べる機会は減ります。暑い夏、火を使う料理はできるだけ避けたい。そんな心理が働くでしょう。となると、調味料(2位)も使わなくなります」(熊野氏)

 食料品の値段がどれほど上昇したか。消費者物価指数(総務省)のデータを分析し、その推移をたどると、この10年間の上昇が凄まじいのが分かる。2020年を「100」とすると、23年は「120」を超す。ほんの3年で20%の上昇だ。1980年から90年は「70~80」程度。日本経済は「失われた30年」といわれるが、食料品は1.5倍以上になっている。

 原材料高、原油高、円安……。物価高騰は激しさを増しそうだ。賢い節約術を実践するしかない。

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