「京急沿線うまい&安い魚と人情の7店」大人気海洋講師が太鼓判、京急ならではの魅力とは?

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 ローカル線で風景を楽しみながら途中下車して街を散策する。うまい店を見つけ、疲れを癒やすのは最高の喜びだろう。腹を満たしたらもう一度電車に揺られて、気になる駅でまた途中下車して街をぶらり……。秋の行楽シーズン、うまい魚料理を求めて東京湾の海沿いを南下する京浜急行(京急)で途中下車の旅へ出かけよう!

  ◇  ◇  ◇

 関東エリアで在来線といえば、私鉄なら京急のほか小田急や京王、東武、西武、東急などで、都営や東京メトロ、JRもあって、グルメ途中下車の旅の候補路線はいくらでもある。その中で京急には、ほかの路線にない独特の風情があるという。

■京急沿線がおすすめの理由は…

 東京海洋大魚食文化論の非常勤講師である西潟正人氏が言う。

「京急本線の中心部は京浜工業地帯で、支線の久里浜線で終点の三崎口駅がある三浦半島に向かうと、キャベツ畑や大根畑が広がっています。そんな土地柄ですから、仕事着での乗客をよく見かけます。JRの東海道線や横須賀線は同じような経路をたどっていてもスーツ姿中心。何となくゆるい京急の雰囲気はまったく違います。

 実際、京急沿線には横浜発祥の市民酒場のほか、朝から飲める店も多く、時間を問わず労働者の憩いの場所になっています。一方、大森海岸周辺の浅海にはノリ網が張られ、子安辺りはアナゴ漁が盛んでした。生麦には魚河岸通りもあり、三浦半島の先端はマグロ船が入港する三崎港です。京急沿線では、そば屋やスーパーなどでもうまい魚が食べられます。だから、京急を途中下車しながら、うまい魚料理を探すのが面白いのです」

 なるほど、京急新子安駅を海側に降りてすぐには市民酒場の名店「諸星」があり、横須賀中央駅の大衆酒場「中央酒場」は朝10時の開店とともに夜勤明けの人が訪れる。労働者に優しいうまい店に事欠かないのだ。そこで西潟氏は、新刊「京浜急行沿線 とびきりの魚屋&酒の肴」(フォト・パブリッシング)を上梓。海洋大の人気講師が認めるうまい店を教えてもらった。

■港町駅「陽洋」

「開店2年目の若夫婦が営む店ですが、毎日書き換えられる品書きの魚種や料理名、きちんと仕事を施されたネタケースの中を見れば、主人の腕の確かさが分かります。

 たとえば鯛湯引き刺し身盛り770円は、皮つきの湯引きと皮を引いた刺し身の盛り合わせで、キュウリの蛇腹が添えられて見た目も華やか。店構えは中華料理店のようですが、2人の気配りもよく、初めてでも落ち着けます」

■黄金町駅「マンナ」

「韓国料理は肉類のイメージが強いですが、魚介類もよく使います。タラの内臓が定番のチャンジャはタコで、海鮮チヂミにはアサリ、エビ、タコに加えて牡蠣などがぎっしりで、スンドゥブチゲもエビやアサリ、タラなどの海鮮づくしです。

 立ち飲み屋で多くは300円か500円でとにかく安い。女将の日本語がイマイチ通じませんが、それも愛嬌で楽しさのひとつです」

■南太田駅「とと」

「屋号は富山の方言で魚のこと。氷見から多種を少量で仕入れています。ある日、カワハギの刺し身650円を頼むと、程なく来た常連も『僕もカワハギを』と続きましたが、『きょうは1匹だけで』と女将に言われて残念そうでした。でも、いただいた刺し身は肝つきで文句ナシの鮮度。関東では珍しいソウハチガレイの煮つけ700円は生から下ごしらえして煮ていました。煮魚も作り置きしません。骨をしゃぶった後、骨湯で飲みたかったほどです」

■井土ケ谷駅「おいらせ」

「主人は北里大水産学部出身で、横浜南部卸売市場でセリ人の免許まで取得し、飲食業に転身した魚好きです。朝2時には海に出かけ、魚を釣る。その釣果と仕入れた魚が品書きに並びます。私がお邪魔したのは初夏で、イサキの刺し身700円は皮面の炙り焼きと皮を引いた刺し身との盛り合わせ。うれしい心遣いに地酒が進みました。海と魚が好きな人にはたまりませんよ」

■逸見駅「ダイヤスーパー香取屋」

「スーパーに入ると、真ん中の厨房を囲むように大皿のお総菜が並んでいて、居酒屋につながっています。このお総菜などを500円以上注文し、居酒屋にお邪魔する仕組みです。ハタハタの唐揚げ200円、カレイの煮つけ180円を頼むと、お姉さんが『持って行くから、飲んで待っていてね』と家庭的。マグロ刺し身とカツオのたたきの盛り合わせは550円。店主自らさばいて持ってきてくれます。昭和風情たっぷり街の台所です」

■金沢八景駅「フライングフィッシュ」

「駅を出て、平潟湾の周りには釣り宿があちこちにあります。この店は釣れ過ぎた魚1キロ分を生ビール1杯と交換し、調理してくれる飲食店なのです。釣り人からの持ち込みだけでなく、漁港を巡って仕入れる魚もあります。

 取材日には大量のマアジが持ち込まれ、見れば地元で金アジと称される極上モノ。次に持参されたイナダは、伊豆の漁師料理べっこう漬けで提供されました。その日いただいたタチウオの刺し身700円の輝きは、よそではまず見られない輝きでしたから新鮮さは抜群です」

■三崎口駅「まるいち鮮魚店」

「三崎港はマグロの水揚げ基地として有名ですが沖には大型定置網もあります。この店では毎日、取れたての地の魚が並ぶので、マグロ目当ての人も、珍しい魚に興味津々です。その中から『これは!』と思うものを見つけたら、直営の食堂で調理され、食べられます。たとえば、タカノハダイは世間で磯臭いと嫌われてスーパーにはまず並びませんが、取れたての甘い香りとおいしさに驚くはずです」

 ☆   ☆

 話を聞いていると、食欲がガンガン刺激され、頭の中で瓶ビールをグラスにつぐ音とともに脳がビールモードに切り替わる。この週末は、京急でうまい魚を探す旅に出かけるゾ!

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