「ナスカの地上絵」新たに303点発見 山形大・坂井正人教授インタビュー「破壊のスピードは今世紀に入り加速している」
南米ペルーの世界遺産「ナスカの地上絵」を調査している山形大学などの研究チームが、新たに303点もの地上絵の発見に成功。9月24日の記者会見は大きなニュースとなった。約700点に上る動物や人型の地上絵は、約2000年前に描かれたとされ、中には人為的な破壊などで消失の危機にあるものが少なくない。調査に関わるナスカ研究所副所長の坂井正人教授が、保護活動の重要性を訴える。
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──地上絵は現在、どのような脅威にさらされているのですか。
地上絵付近の20世紀の航空写真と、今世紀の航空写真及び人工衛星画像を比較すると、人々の居住範囲が拡大していることがわかります。ペルーの発展と景気の好調に伴い、都市化による宅地開発や農地の拡大が進みました。ゴールドラッシュの影響で鉱山開発も相次いでいます。今世紀以降は特に、地上絵が破壊されるスピードが一層加速しています。私たちが2010年に現地調査を始めた際には確認できた直線状や台形の地上絵などのいくつかが消失してしまった。また、ナスカ台地を流れる水に関する問題にも頭を悩ませています。
──どういうことでしょうか。
まず地上絵が現存している理由から説明した方がよいでしょう。よくナスカ台地の気候は雨が降らないと説明されますが、まったく降らないわけではありません。確かに年平均の降水量自体は少ないのですが、突発的に雨が降ることがある。近くの山に降った雨が台地に流れ込み、長年にわたって台地が浸食されました。一方、地上絵を描いた昔の人々は台地に流れる水の動きをしっかりと理解していたのでしょう。水による侵食の影響を受けにくい地区を選んで地上絵を描いています。先人たちが残した文明の知恵により、地上絵は何も起きなければもう2000年間は残存するだろうと考えていたのですが……。