大阪ディープスポット巡礼! 味園ビルと双璧をなす「三ツ寺会館」が愛おしい
「ここが暗いのではない、世界が明るすぎる」
そんなじゅんこさんにオススメされて向かったのが、3階の「サイケデリックバー&クラブ ganja/acid」。穏やかならざる店名だが、今年33年目の老舗である。
入り口のビニールをくぐると、店内はほとんど真っ暗。自分の指先が見えるかも怪しい中、カウンターに現れたのは、サングラスに黒マスク、20センチはあろう白ひげを蓄えたオーナーのテツジンさんだ。「ギャル男が世に生まれる前からギャル男だった」というテツジンさんに見せてもらった写真には、長い金髪を盛りに盛った若き日の姿が。今の風貌からは想像がつかない。
客が入ってきたら徐々に店内を明るくするスタイルで、テツジンさんが手元のスイッチをいじると、カウンターに置かれた色とりどりの奇抜な照明に明かりがともる。やがてサイケ空間の完成だ。
イチ押しのCBD(麻由来の成分)カクテルをなめつつ「店内暗いですね」と聞くと、テツジンさんは「ここが暗いのではなく、世界が明るすぎるのでは」とひと言。この言葉にハッとした。
三ツ寺会館はディープスポットや魔窟と言われるが、どの店も自分の「好き」を前面に押し出し、嘘偽りはまったくない。あるのは、自らへの「正直さ」だ。それゆえ周囲からは「ディープ」に見えるのだろう。
だからこそ言いたい。三ツ寺会館が魔窟なのではなく、むしろ世界が偽りに満ちているのではないか、と。まあ知らんけど。
(取材・文=高月太樹/日刊ゲンダイ)