市場で注目される「低PBR銘柄」 個人投資家の投資戦略と東証が評価する29社
アクティビストの株主提案が増加
証券市場で何が起きつつあるのか。みずほ証券チーフ株式ストラテジストの菊地正俊氏は、「低PBR株の逆襲」(日本実業出版社)を上梓。ではその「逆襲」とは何か。菊地氏に詳しく聞いた。
「日本はこの20年間、半分くらいの企業がPBR1倍割れです。米国は平均4倍なのに、日本は平均1.4倍。そこで東証は3月末に“資本コストと株価を意識した経営をせよ”と打ち出した。これが低PBRの逆襲の始まりでした。2つ目が日銀の金融正常化で、昨年、長期金利のYCC(イールドカーブ・コントロール)を見直しました。今年4月にはマイナス金利を解除するともみられていて、金融正常化は低PBRの代表株である銀行株にプラスに働きます。3番目は、割安株をターゲットとするアクティビスト(物言う株主)や日本のエンゲージメントファンド(対話する投資家)の活発化です。こういった投資家からの圧力が、今まで市場を無視してきた低PBR企業を目覚めさせる新しい動きのキッカケになったのです」
低PBRであり続けることの問題はほかにもあるのか。
「最近は企業が社員に株式オプションを与えたり、役員報酬で株を与えたりしています。ところが、低PBRだと株価が上がっておらず、時価総額が低いことを意味しますから、社員や経営者への還元が少ない。また、低PBRだとアクティビストから経営に介入される可能性が上がります」
昨年の株主総会でも国内外のアクティビストの動きが活発だった。
「IRジャパンが公表したアクティビストの統計でも活動の活発化がうかがえます。戸田建設の株主である米ダルトンは昨年4月、東証のPBR対策を受け、自己株取得を求める株主提案をしました。ダルトンの株主提案は、一昨年はゼロだったのに昨年は7件。アクティビストからしたら、東証の対応はアクティビストの活動に“口実”を与えたようなものです。そもそも米国は企業経営がしっかりしているし、バリュエーション(株や企業の評価)も高い。日本市場にチャンスがあるとみているのでしょう」