マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと
タクシー運転手は「絶対に行かない」
マレーシアのSNSでは「売り場の家具の扉が勝手に開くのを目撃した」「このプロジェクトに携わったエンジニアが超常現象を見た」などと騒がれた。筆者が乗った華人のタクシー運転手は「ららぽーとには絶対に行かない」と言い切っていた。
そこまで極端に嫌われるのは、第2次世界大戦中、日本軍がプドゥ刑務所を捕虜収容所として使い、連合軍や地元市民の多くが拷問を受け、斬首されたという歴史があるからだ。
日本軍はとりわけ現地の華人を「敵の中国を財政的に支援した」という疑いをかけ殺害した。マレーシアの大学で教壇に立つ日本人研究者は次のようにコメントする。
「負の歴史遺産をどう継承するかが課題となる中、マレーシア側がプドゥ刑務所を解体し、再開発したがっていた可能性も推察されます」
東南アジアでの日本軍の足跡について調査活動をする大東文化大学名誉教授の田中寛氏は、「加害側よりも被害側の記憶ははるかに鮮烈で、特にアジアでの戦争の歴史は、向き合い方次第でビジネスに大きく影響します」と語る。
三井不動産に客離れの原因について質問したが、これには触れず「来客者数の増加、売り上げ改善に向けて事業推進中」とだけ回答があった。戦争は過去のもの──そう割り切ってしまったところに最大の誤算があったのかもしれない。 =つづく