ブラザー工業(上)仁義なき戦いから一転、ローランドDGの買収を“断念”
ローランドDGは広告・看板向けインクジェットプリンターで世界首位級の優良企業だ。
■「こんなおいしい話はない」
14年6月27日に開かれたローランドの定時株主総会に車イスで出席した梯は「MBOをやると、DG(の株)がそのまま付いてくる。(タイヨウにとって)こんなおいしい話はない。それが、わかっていますか」と質問。MBOではドル箱のローランドDGを手に入れるタイヨウだけが利益を得ることになるから、「投資ファンドによる乗っ取りだ」と強硬に主張した。
三木が代表取締役となっている特別目的会社が実施したTOBは14年7月に成立。ローランドは同10月に上場廃止となった。
そして、6年後の20年12月、ローランドは東証1部(現・東証プライム)に再上場を果たした。出口戦略でタイヨウはボロ儲けした、といわれている。
タイヨウは22年、任天堂創業家の資産運用会社ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)に買収された。YFOは実績を上げるため、MBOによっていったん非上場となった優良銘柄を再上場させる作戦に打って出た。
「そのMBO待った」と大手を広げて立ちふさがったのがブラザーなのである。 =敬称略、つづく