プーチンだけが丸儲け…米国&ウクライナ会談決裂にニンマリのロシアが描く青写真と警戒心
昨秋から渦巻いていた懸念が的中した。米国のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領による先週末の会談は決裂。ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領をめぐり、テレビカメラの前で激しい言い争いを繰り広げ、ゼレンスキーはホワイトハウスから追い出された。これで停戦は先送り。プーチンに追い風だ。
首脳会談の主題は、ウクライナの資源権益に関する協定への署名だった。軍事支援に対する見返りを要求するトランプの顔を立てるためだ。その前段で「安全保障を伴う停戦」を訴えるゼレンスキーの発言をトランプはことごとく聞き流し、「取引」「掘る」を連発。「プーチン大統領は私のことを尊敬している」「数日前も電話した」「私と取り決めをしたがっている」とわめき散らして肩入れし、物別れに終わった。
■出来過ぎにクレムリン警戒
歴史修正主義者のプーチンはあれこれ理由をつけているが、侵攻の最大の目的はウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟阻止だった。開戦から3年、トランプの再登板でそれ以上の果実を手に入れかねない勢いだ。筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)はこう言う。
「プーチン氏の狙いは早期の対ロ制裁解除、経済へのテコ入れです。膨張する軍事費をさらに増やし、ウクライナ全土を占領下に置くまで戦争を完遂しようとしている。トランプ氏にしてもビジネスにしか関心がない。ロシアが一方的に併合したウクライナ東部のほか、極東シベリアへの投資も視野に入れ、ロシアとの経済協力に前のめりです。両者はウクライナの主権を認めない点でも共通することから、プーチン氏は第2のヤルタ会談を構想しています。当時の英国の代わりに中国を引き込み、米中ロで戦後処理を協議し、同時並行で米国との経済協力の枠組みをつくる。今年80年を迎える5月9日の対独戦勝記念日までに形にし、式典にトランプ氏と習近平国家主席を列席させ、正当性をアピールしようとのもくろみです」
しかし、トランプが2月中の実施をにおわせていた米ロ首脳会談はメドが立っていないようだ。
「トランプ氏のプーチンびいきが露骨で、クレムリンではこのところ警戒感が広がっていました。ゼレンスキー氏に恥をかかせた以降は拍車がかかり、罠をかけられているのではないかと、疑心暗鬼になっている」(中村逸郎氏)
過ぎたるは及ばざるがごとし。歯車がかみ合わないことを祈るばかりだ。