史上最速の大関撃破 逸ノ城「動ける200キロ」の実力
その取組の直前だけは国技館内のみならず、記者や力士で賑わう支度部屋さえも、水を打ったように静まり返った。
11日目に新入幕の逸ノ城(21)と大関稀勢の里(28)が対戦。逸ノ城にとって、これが初めての大関戦だ。新入幕ながら9勝1敗の逸材は大関に通用するのか。日本人最強といわれるガチンコ大関は“モンゴルの怪物”とどう戦うのか。2度、立ち合いの呼吸が合わずに逸ノ城がつっかけると、緊迫した空気はいよいよ増したように思えた。
しかし、注目の一番はあっけなく終わった。逸ノ城が立ち合いで左に変化をしてはたき込むと、稀勢の里はそのまま土俵にベッタリ。まさかの幕切れに館内は「あーあ……」というファンのため息に包まれ、支度部屋の力士も「あれはやっちゃいかんだろう……」と思わず漏らした。
■これまでの200キロ力士より動きが軽快
これで10勝1敗。入門5場所目での大関撃破は史上最速だ。一部には「初めて大関に挑戦するときくらいは正面からいかないと」という声もあるものの、これで明らかになったのが逸ノ城の実力だ。