「商業五輪は限界にきている」相次ぐ招致撤退に識者断言
24年夏季五輪に立候補したハンブルク(ドイツ)が、住民投票で過半数の支持を得られずに撤退した。ドイツは、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の母国だけにIOC委員のショックは大きい。24年五輪の招致ではボストン(米国)も撤退。22年冬季五輪もミュンヘン(ドイツ)、オスロ(ノルウェー)、クラクフ(ポーランド)、ストックホルム(スウェーデン)が立候補を取りやめた。
その理由は国によって異なるが、多額の投資や大会後の競技施設の用途が少ないことなどを住民が懸念したからだ。スポーツアナリストで、社会学者・経営学者の松野弘氏(千葉商科大学人間社会学部教授)は、「巨大なスポーツ・ビジネス市場の出現がオリンピックに対する考え方を変えてきた」と言う。
――近年、五輪招致に関して多くの都市が立候補を取りやめています。
「日本のように、目先の経済効果より将来の財政負担を考えていかないと、バルセロナ五輪等のように、『祭りの後の貧困』という状況になりかねません。最近の五輪候補都市をみると、財政的にむしろ裕福でない都市が巨額の『五輪マネー』を当てにして立候補しているケースが多い。自分たちの生活を最優先した、今回のハンブルク市民の選択は賢明です」