「商業五輪は限界にきている」相次ぐ招致撤退に識者断言
――巨額マネーといえば、故・サマランチ元IOC会長は80年代から、五輪の商業化で莫大な利益を生み出しましたね。
「五輪で最初にテレビ放映権が認められたのは1960年のローマ大会(120万ドル)でした。五輪の商業主義化がオープンにされたロス大会(84年)では、テレビ放映権料は2億8700万ドルへと高騰し、12年ロンドン大会の総合放映権料は約40億ドルにまで達しています。過剰な商業主義化路線が腐敗の温床になったことは確かです。こうした拝金主義的な商業五輪も限界に来ています」
■「スポーツ資本主義が存続する限り不正は続く」
――商業五輪で潤ってきたのはIOCだけではありません。
「スポーツ・ビジネスが年間111兆円という途方もない巨大市場へと急成長した。その結果、スポーツをビジネス資本とし、豊富な資金力をもつ大手メーカーなどのスポーツ資本家が、資本の再生産を可能にする有名スポーツ選手(いわば、スポーツ労働者)を自由に操る、新しい社会経済システムとしての『スポーツ資本主義』を生み出したと考えられます。選手は五輪でメダルを取れば、契約メーカーなどから巨額の報酬を得られる。そのために、不正薬物に手を出す者が後を絶たないわけです」