著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

試合に出ず13億円「訴訟社会」は「契約順守」と背中合わせ

公開日: 更新日:

 米国体操連盟の元医師であったラリー・ナサル被告による女子選手への性的虐待問題は、「訴訟社会」と言われる米国に住む人々に衝撃を与えた。ナサルの被害を受けたと訴えた選手の数が332人に及んだだけでなく、ナサルが所属していたミシガン州立大学(MSU)と被害者が総額5億ドル(約545億円)で和解したからだ。

 MSUは教育と学校経営の面で力を持つ公立大学として知られる。そのようなMSUが従来の米国大学スポーツ界での和解金の最高額1億ドルの5倍、さらにエアバッグの異常によって史上最大規模のリコールを行ったタカタが米国司法省に支払う和解金10億ドルの半分の金額を支払うと決めたのだから、MSUにとって「ナサル事件」が高額な和解金を支払ってでも解決すべき重大事であることは明らかだ。

 しかも、被害者が個別に訴訟を起こせばMSUはより高額の慰謝料や賠償金を支払わなければならない可能性があった。それだけに5億ドルという和解金は、MSUにとって事態の悪化を食い止めるための必要最低限の金額であったと言えるだろう。

 ところで、プロスポーツの分野では、契約の解除に伴って球団が選手に違約金を支払う事例があることは周知の通りだ。

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