足も肩もいい遊撃手の「進学」を真に受けちゃいけない
「ええ。わざわざ大学の監督に足を運んでもらって、守備と打撃を教えてもらってるし、恩返しの意味で、その大学に世話になるそうです」
「誰がそう言ってるんだ?」
「高校の野球部監督ですよ」
すると、オレと担当スカウトの会話に部長が首を突っ込んできた。
「で、進学って、どこの大学だよ」
スカウトが口にした大学の名前を聞くなり、部長が「そんなもの信用できるか!」って、こう言った。
「その大学に太いパイプをもってるスカウトがいるじゃねーか、ライバル球団に。あのショートを大学にねじ込んで、4年後の一本釣りを企んでいるのか、あるいは進学って言わせて他球団を牽制した上で、秋のドラフトにかけるつもりなのか……いずれにせよ、あの高校生の周辺を念入りに調べた方がいいゾ」
ドラフト1位クラスならともかく、そうでない選手が進学を希望する場合、プロ側はまず手を出さない。そうやってノーマークの選手が、ギリギリになってプロ志望届を出したとしても、対応しにくい。最初にリストから外してるから、実力や性格の調査も十分じゃない。だからこそ、高校生の「進学」は隠れみのになり得るというのだ。
やれやれ、クソ暑い甲子園が終わったら、担当スカウトと、さらに暑い南へ出張か……そう思ったら、また全身から汗が噴き出したね。