ワイドショーに閉口…金足農・吉田輝星“礼賛”一色の危うさ
今夏の甲子園を沸かせた金足農業高(秋田)のエース・吉田輝星投手についての礼賛報道が過熱の一途をたどっている。
確かに、同大会は日本人が古くから高校野球に求めてきた類型的なドラマツルギーを見事に表していた。地方の清貧な雑草軍団が都市部のエリート軍団に立ち向かう少年漫画的な構図。その雑草軍団を牽引する弱冠17歳の逸材が郷土の夢まで背負わされて奮闘する様子。さらにその逸材は炎暑の中、1人で計881球も投げるなど将来的な投手生命の危機をはらませつつ、一部からの制止の声を振り切って巨大戦力に猛進し、最後は玉砕する。言葉は悪いが、玉砕に美を感じる日本人の性を見せつけられた。
だからこそ、リテラシーの高まった現代社会では懐疑的な声も少なくない。もちろん、地上波テレビの多くは相変わらず感動ポルノ一色の礼賛報道に終始しているが、世は多様メディアの時代であるから、一部の雑誌やネット媒体では「投手の酷使」「熱中症の危険」「過密な大会日程」など、高校野球につきまとう恒常的な問題についての批判が巻き起こっている。要するに、高校野球は玉砕覚悟の残酷ショーだから輝きを放つのだと理解しつつも、その大衆心理は無責任だと切り捨て、選手ファーストに則った改革を求めているわけだ。