私が阻止したトレードマネー1億円 宗兄弟のダイエー移籍
「それがいくらか、どこの会社かも知っているんだ」
「……」
「言い分はわかったが、金をもらって移籍したら陸上界から抹殺だよ。それは覚悟してくれ」
宗兄弟は「商品価値」の高い時に移籍し、引退後は移籍金で郷里に運動具店を開業する構想を持っていた。同時に、子供たちにランニングを教えるためのクラブをつくり、そして長距離選手の育成をしたいとも言った。
「それは素晴らしいことだが、今の世の中、アマチュアが金をもらうことは許されない。おまえたちが会社に残るための条件を聞かせてくれ。私が会社と話をする。結果次第では残るか?」
「帖佐さんに一任します」
旭化成の陸上部長は当時、亀井郁夫氏(後に参院議員)。亀井静香元衆院議員の兄だ。亀井部長と大串監督に事情を説明し、担当者に次の2点を要求した。
①宗兄弟の実績に対し功労金を出す。
②2人が競技生活を退いた後も学歴差別をせず、職を与えることを約束する。