力投より緩急 大船渡・佐々木朗希“MAX140km”の投球センス
「4月のU18合宿では、紅白戦で163キロを投じた翌日、ストレッチなどの調整にとどめた。163キロを投げた1日だけを見ればすごいですが、2日間で見るとまだ基礎体力などイロハの部分から鍛錬が必要。まだまだ成長途上だと思う。大船渡が夏の甲子園を目指すなら、絶対的エースである佐々木は県大会の段階で連投する必要がある。大会の序盤で力をセーブして投げながら勝ち上がる練習というか、力を抑えても試合をつくれるかどうかを試したのでしょう」
肉体面に制約がある中で佐々木は、仙台育英戦よりもさらにギアを落とし、投球に工夫を凝らした。前出の安倍氏は、こうした“省エネ投球”をできることが能力の高さを示しているという。
「佐々木は常にエイヤッと投げる力投型ではなく、自分で投球に強弱、緩急をつけられる。力を入れないでもいいボールを投げられるコツを身に付けている。これはむしろ、彼の大きな長所だと思う。163キロを投げたU18しかり、157キロを投げた昨夏しかりです。昨夏の県大会を見た時には、まるで打撃投手のような力感のない投球スタイルで150キロを投げ、変化球もキレがあり、制球もできていた。速い球を見せびらかすことなく、しっかり緩急を使っていた。変化球でタイミングを外す面白さを感じつつあり、その技術も持っていると感じた。とんでもない投手が出てきたと思ったものです。同期のトップクラスの投手では奥川(星稜)が緩急を駆使するタイプ。佐々木はU18合宿などを通じて彼に刺激を受け、お手本にしているのかもしれません」
観客をガッカリさせた「MAX140キロ」にむしろ、佐々木のセンスが見て取れるというわけだ。