朝乃山は横綱白鵬に完敗…それでも得られた正攻法での収穫
最強横綱と先場所V力士が激突した。
8日、結びの一番は横綱白鵬(34)vs 朝乃山(25)。先場所、初賜杯を抱いた朝乃山が、白鵬にどう立ち向かうかが注目された。
ともに右の相四つ。まず、白鵬は朝乃山の左上手を立ち合いで即座に取った。朝乃山も上手を探るが届かず、右下手のみ。そこから両者、土俵中央で膠着状態となった。最後は朝乃山が前に出ようとしたところを、白鵬が「待ってました」とばかりに上手投げ。相手の力を利用した形になった。
組めば無敵といわれた白鵬を、攻めあぐねさせた朝乃山の粘り――とみる向きもあろう。だが、ある親方は「白鵬の余裕が垣間見えた」と、こう続ける。
「白鵬にすれば、左上手を取った時点で、どうとでも料理できる。膠着状態はむしろ、白鵬が『さあ、おまえはここからどうする?』と言ってるように見えた。足を掛けて誘いをかけたのも、そのひとつでしょう」
だからといって、朝乃山が株を下げたわけではない。そもそも、朝乃山は今場所の前頭筆頭が最高位。上位力士と軒並み当たる経験は初めてで、分が悪いのは当然だ。それでも「(白鵬の)左上手を一瞬さわったけど……」と話したように、真正面から横綱とぶつかりながら、「前に出て形をつくる」という自分の相撲を貫いた。多くの力士が初めての結びの一番でガチガチになる中、「楽しかった」と言ってのけた豪胆さもある。
「まだまだ朝乃山は白鵬に及ぶところではないが、白鵬に正攻法でぶつかっていったのだから大したもの。もし、立ち合いで白鵬が左上手を取れなかったら、まさかの展開もあったかもしれない」(前出の親方)
この1敗が、朝乃山をさらに大きくする。