96年11.5差逆転された広島OB 巨人の独走止めるヒント伝授
7月6日の時点で3位巨人は首位広島に11.5ゲーム差をつけられていた。
しかし同9日、9連勝中だった広島相手に、札幌・円山球場で日本タイ記録となる9者連続安打を浴びせ、一挙7点を奪って勝利。これをきっかけに逆転優勝を飾った。当時、広島の一軍投手コーチを務め、「メークドラマ」を体感した川端順氏(59)は「逃げるのは苦しいものです」とこう振り返る。
「80年代のカープは投手王国といわれましたが、当時は過渡期でエースの紀藤頼み。一方で打線は緒方、正田、野村、江藤、前田、ロペス、金本、西山と並び、規定打席に到達した5人が3割以上。完全に打撃のチームでした。そんな中、エースが巨人に9連打を浴びてチームが動揺したのは確かです」
紀藤はこの年、12勝7敗ながら、防御率は4.27だった。巨人戦で連打を浴びた後遺症か、後半戦は6試合連続で先発に失敗。それでも投げ続けた。
川端氏が続ける。
「私は三村監督に『登板を1度空けるか、抹消してリフレッシュさせましょう。状態を戻してから投げさせましょう』と何度か進言しましたが、監督に『これまで紀藤で勝ってきた。エースと心中しようじゃないか。ただでさえ投手陣の層が薄いのに、どこに代わりがおるんや?』と言われ、答えに窮してしまいました。あの時、もっと強く言っていれば……。投手コーチの責任です。すると、『何で紀藤さんを外さないんですか?』と野手陣の不満が爆発。投手が打たれて負けると、『ピッチャーは何しとんねん』という声が聞こえてきて、つらかったですね」