誇り高き南太平洋諸国の代表 サモアの伝統とタトゥー物語
ラグビーの国際統括団体である「ワールドラグビー」は、以前からW杯出場各国に対して「日本国内において試合以外の公共の場ではタトゥーを隠すように」と奨励していた。理由はいまさら言うまでもないが、日本における「入れ墨」の認識に配慮したものである。
伝統的にタトゥー人口の多いニュージーランドをはじめとする南太平洋諸国代表も、一様にその提案を受け入れた。日本文化を尊重して〈郷に従う〉ということだった。
国によっては選手たちにタトゥーを隠すテープや、そのまま水にも入れるスキンスーツを用意したと聞くが、受け入れ側の日本の方が逆に恐縮している。「そこまでしなくても」とか「うちの入浴施設は隠さなくてもかまわない」といった申し出が相次いでいる。
東京五輪前にラグビーW杯があったことは、このあたりの軌道修正に役立ったのではと思う。
タトゥーは世界規模で愛好者がいる。その歴史は、はるか古代エジプトにまでさかのぼる。伝統や宗教、通過儀礼、ファッションなど目的はさまざまだ。ミクロネシア、メラネシア、ポリネシアなどの地域は特に多く、日本と対戦するサモアもタトゥー率が高い。選手だけではない。来場するファンもそうだ。男子でいうと成長期の終盤に当たる14~18歳のころに墨を入れるらしい。もちろん強制ではない。