目指すのはマークされてもスピードで相手をぶち抜ける選手
「足りないのは仕掛けるプレー」
日本とは、何もかも事情が違う異国で地位を確立するのは難しい。移籍直後は、主力組に入れてもらえずに苦しんだ。
「監督から戦力として見られていないように感じました。でも開幕1週間前の練習試合でいいパフォーマンスを出せて、多少は認めてもらえるようになった。8月11日のリーグ初戦スポルティング戦も後半からチャンスをもらえました。ポルトガル3強の一角が相手だったけど、リーグのことが全然分かんない状態だったんで逆に良かった。『いけるんちゃうか?』と感じましたね」
3戦目となった8月25日のトンデラ戦。前田は初スタメンを勝ち取り、松本山雅時代にはほとんどなかったヘディングで豪快にゴール。指揮官から信頼を勝ち取ることに成功した。その後9月23日のブラガ戦、10月21日のカップ戦でもゴール。序盤戦は、上々の出来と言っていいだろう。
「ブラガ戦はサイドバックが裏に出したボールに反応し、スピードに乗った状態で相手の前に入って倒されてPKをもらいました。『自分で蹴ります』と主張したら、『ダメ』みたいに言われたけど、『俺が蹴る』と。海外ではそういうのが大事かなと思いました」と大阪出身らしい押しの強さで貴重な得点をもぎ取った。海外で成功した日本人アタッカーは本田圭佑(無所属)、岡崎慎司(スペイン2部ウエスカFW)、香川真司(スペイン2部サラゴサMF)と関西人が多いが、前田もその1人に加わりそうな気配も漂う。
「ただ、自分に足りないのは仕掛けるプレー。最初は2トップの一角でプレーしていたけど、5試合目くらいから4-1-4-1の右MFがメインになりました。そこでは最低(相手を一人)1枚ははがしてグイグイ行くことが求められる。日本人は海外の相手とやるとスピードで負けることが多いけど、僕はぶち抜ける選手を目指しています。まだまだですが、マークされてもスピードでぶち抜くのが理想ですね」と野心をのぞかせる。
松本山雅時代は〈ハードワーカー〉のイメージが強かったが、「守備ができるのは確かに武器だけど、自分に足りない攻撃面をプラスするためにここに来た」と言い切る。その言葉通り、爆発的な打開力を身に着け、目標である今季10得点をマークすることが、前田大然の名を広く知らしめる方法だ。強い自覚を持って彼は今、遠い異国で必死に戦っている。=つづく