著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

目指すのはマークされてもスピードで相手をぶち抜ける選手

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「足りないのは仕掛けるプレー」

 日本とは、何もかも事情が違う異国で地位を確立するのは難しい。移籍直後は、主力組に入れてもらえずに苦しんだ。

「監督から戦力として見られていないように感じました。でも開幕1週間前の練習試合でいいパフォーマンスを出せて、多少は認めてもらえるようになった。8月11日のリーグ初戦スポルティング戦も後半からチャンスをもらえました。ポルトガル3強の一角が相手だったけど、リーグのことが全然分かんない状態だったんで逆に良かった。『いけるんちゃうか?』と感じましたね」

 3戦目となった8月25日のトンデラ戦。前田は初スタメンを勝ち取り、松本山雅時代にはほとんどなかったヘディングで豪快にゴール。指揮官から信頼を勝ち取ることに成功した。その後9月23日のブラガ戦、10月21日のカップ戦でもゴール。序盤戦は、上々の出来と言っていいだろう。

「ブラガ戦はサイドバックが裏に出したボールに反応し、スピードに乗った状態で相手の前に入って倒されてPKをもらいました。『自分で蹴ります』と主張したら、『ダメ』みたいに言われたけど、『俺が蹴る』と。海外ではそういうのが大事かなと思いました」と大阪出身らしい押しの強さで貴重な得点をもぎ取った。海外で成功した日本人アタッカーは本田圭佑(無所属)、岡崎慎司(スペイン2部ウエスカFW)、香川真司(スペイン2部サラゴサMF)と関西人が多いが、前田もその1人に加わりそうな気配も漂う。

「ただ、自分に足りないのは仕掛けるプレー。最初は2トップの一角でプレーしていたけど、5試合目くらいから4-1-4-1の右MFがメインになりました。そこでは最低(相手を一人)1枚ははがしてグイグイ行くことが求められる。日本人は海外の相手とやるとスピードで負けることが多いけど、僕はぶち抜ける選手を目指しています。まだまだですが、マークされてもスピードでぶち抜くのが理想ですね」と野心をのぞかせる。

 松本山雅時代は〈ハードワーカー〉のイメージが強かったが、「守備ができるのは確かに武器だけど、自分に足りない攻撃面をプラスするためにここに来た」と言い切る。その言葉通り、爆発的な打開力を身に着け、目標である今季10得点をマークすることが、前田大然の名を広く知らしめる方法だ。強い自覚を持って彼は今、遠い異国で必死に戦っている。=つづく

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