伝説のコーチが初激白<上>阿部慎之助は指導者の資質がある
今季限りで現役を引退し、指導者として再スタートを切った巨人の阿部慎之助二軍監督(40)。現在ジャイアンツ球場で行われている二軍の秋季練習では、連日ノックの嵐を浴びせ、自ら打撃投手を務めるなど、若手と一緒に汗を流している。
いずれは一軍監督というのが既定路線。そんな未来のトップの「育ての親」といわれるのが、今季まで巨人の巡回打撃コーチを務めた内田順三氏(72)だ。
現役引退後、1983年から37年間、広島と巨人で交互に打撃コーチなどを歴任。巨人では松井、高橋由、阿部、広島でも前田智や金本ら数多くの名選手を超一流に押し上げてきた。そんな「名伯楽」が阿部二軍監督に、指導者としての心構えなどメッセージを送った。
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■由伸は気の毒だった
阿部は長く捕手という扇の要を務めた。球界を代表する打者にして球史に名を刻む捕手。外野手としてみんなの背中を見ているのと、全体を見渡してきた捕手とでは野球観が違う。歴史上、捕手出身の監督はあまり失敗していない。野村さん(ヤクルトなど)、森さん(西武)、上田さん(阪急)、伊東(西武など)……。苦労したけど、古田(ヤクルト)もそうだ。
ジャイアンツの監督はスター選手がなる。(高橋)由伸は現役を引退していきなりだったから気の毒だった。阿部が二軍で泥にまみれて一緒に勉強するのはいいと思う。これまでの巨人の監督は上(一軍)しか見ていなかった。二軍は勝ち負けより育成の場。いきなり一軍の監督をやるより、思い切ったことができる。
■選手の気質が変化している
阿部はアナログな一面を持ち合わせている。
捕手だからデータや科学的な数値は大事にする。一方で、(2012年)日本シリーズで沢村の頭をポカンと叩いたでしょう。あれはパフォーマンスなんだろうけど、昨年あたりからパワハラ問題がどんどん噴出して、我々指導者は正直なところ、身動きが取れなくなっている。
もちろん殴るのはダメ。でも、言葉で注意するのは難しいこともある。選手の気質も変わってきている中、ああいう「強さ」みたいなものを注入するのも必要だと思う。
言葉で理解させるのは大事。でも行動でアドバイスするのも大事。プロでも「習うより慣れろ」というところはある。自主性はもちろん大事だが、やらせないといけないこともある。二軍監督には厳しさも求められる。阿部はそれができる男だ。