専門家が徹底解剖 佐々木朗希「163キロ直球」を生かす秘策
8日から寮生活がスタートしたロッテ1位の佐々木朗希(大船渡)。足を高く上げ、190センチの長身から最速163キロのストレートを繰り出す右腕の球質の秘密と今後の課題は何か。2018年11月、実際に佐々木の投球解析を行ったスポーツ科学の専門家である神事努氏(40=国学院大人間開発学部健康体育学科准教授)に徹底解剖してもらった。
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――佐々木のデータ(別表参照)から見える特徴を教えてください。
「回転数はプロの平均以上で、回転軸角度も78度と平均より立っており、かなりきれいなバックスピンをかけています。一方で、シュート成分が非常に大きいですね。プロのスカウトさんとも話をして、シュートする時はすごくシュートすると言っていました。佐々木投手は、投球時に足を高く上げ、直立することをかなり意識していると思います。(リリース時に)体をやや横に倒して腕の通り道をつくる投手もいますが、佐々木投手はスリークオーター気味のフォームなので、腕が体から離れがちになり、横から腕が出るので、球がシュートするのです」
■今のままでいい
――佐々木の場合、このシュート成分はマイナスになりませんか?
「私はこのままでいいと思います。シュートをしても、他の球種で補う、というところにフォーカスを当てれば、全く問題ないと思います。そもそも、右打者からすると、(迫ってくるように見えるため)その球自体が嫌だと感じるでしょう。佐々木投手の場合、これを殺すことによって、スピードが出なくなったりするのであれば、変化量の多いストレートを投げることが合っているのだろうとは思いますね」
――これほどシュート成分が多い投手は他にいますか?
「あまりいないと思います。そもそも指導者が直そうとしがちですし、シュートしない球がいい球、という前提があると思います。ただ、オリックスの山本由伸投手も、佐々木投手に似たタイプだと思っています。(最速158キロの)山本投手もシュート成分が多い。シュートする球を基準としながら、カットボールも投げます。シュート成分が大きい投手がカットボールを投げると、ストレートと比べてシュート回転しないので、打者からすると、少しだけ動いているように見えると考えられます」
――いわゆる目の錯覚ですか?
「山本投手はボールが打者の手元で動く、とよく言われます。打者はこれまでの経験によって、投手の球筋を予測します。<ストレートがシュートする>ことが標準型としてある中で、カットを投げることでストレートがシュートしないように見えたり、少しだけスライダーっぽく見えたりする効果があります」